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莫紀宏村民自治における人権問題を注目すべき

作者:莫纪宏
要約:村民自治はわが国における下部群衆自治の組織形式の一つであり、憲法理論上地方自治に属す。現行の「村民委員会組織法」に基づき、村民自治の組織形式には村民会議、村民代表会議などが含まれ、その中に村民選挙で生まれる村民委員会が一番重要な形式である。同法2条は村民委員会が村民の自己管理・自己教育・自己サービスを実現する下部群衆自治組織として、民主選挙・民主決定・民主管理・民主監督を行うと規定する。しかし、わが国の憲法理論上、長い間、村民自治組織と村民の間の法律関係が注目されていず、村民自治組織が村民を凌駕する「公法組織」となって村民を統治するという事実上権力関係が形成された。それに、村民自治組織の権力範囲が法律上明らかに規定されず、村民自治組織が村民の個人権利、特に憲法上の基本権利を侵害しやすいことになった。今まで、わが国の憲法及び法律が村民自治組織に個人権利を侵害された村民に十分な権利救済を与えていず、村民が個人合法権利を村民自治組織の「活動」によって厳重的に侵害された現象が深刻になっている。この文では、村民自治組織が村民の憲法的基本権利を侵害した典型的な事例の制度背景及び社会要素を分析した上で、村民自治組織が不当又は違法で村民自治権を行使し村民の基本権利を侵害することを防止するために、わが国における地方自治及び村民自治の法的性質を明らかにしてから厳密な村民権利救済制度を作るべきであると考えられる。

キーワード:村民自治村民会議村民代表会議村民自治権基本権利権利救済

村民自治はわが国における重要な自治形式の一つとして、憲法上及び法律上認められる。しかし、次に掲げる理論的問題を検討する必要がある。①わが国において村民自治を実行する主な目的は何か、②憲法及び法律に定められる民族区域自治及び特別行政区自治の規定によって村民自治の性質を解釈できるかどうか、③村民自治権が村民自治を制度化にする前提であるかどうか、④どうやって村民委員会の地位を確定したほうがいいか、⑤村民自治権と村民個人基本権利の間でどのような関係であるか、などである。以上の問題を憲法学上合理的に解釈できなければ、村民自治の独立性が弱くなって、自治の立場から村民組織形式を建設することがうまい効果を取らなくなる。

村民自治という言葉がわが国における法律専門語ではないが、村民自治の実行に関する法律規定に言及される。例えば、「中華人民共和国村民委員会組織法(試行)」(1987年11月24日第六期全国人民代表大会常務委員会第二十三回会議で可決された)1条は、この法律は「中華人民共和国憲法」の本旨に基づき、村民自治の実行を保障し、村民を法律によって自己に関する事務を扱わせ、農村における社会主義民主・物質文明・精神文明の建設を促すことを目的とすると規定する。1998年11月4日、第9期全国人民代表大会常務委員会第5回会議で可決された「中華人民共和国村民委員会組織法」は右試行における村民自治に関する規定を認める。2010年10月28日、第11期全国人民代表大会常務委員会第17回会議で改正された「中華人民共和国村民委員会組織法」1条も「村民自治」の概念を明記する。以上から見れば、村民自治が少なくとも法律上肯定された自治形式である。村民自治は憲法上の直接根拠がないものの、その実施が適法であると言われる。共産党の第11期三中全会が開かれた後、村民自治が初めに試行された。そして、村民自治の実行された後が前より実質上どのような違いがあるのか、どうして「村民自治」を実行するのか、わが国の農村において村民自治という形がどんな社会事務を扱うのか、農村で憲法及び法律に規定された公民権利制度に基づき国家権力と公民権利との関係を扱うかどうかなど、問題になっている。村民自治と公民権利との関係が憲法上極めて複雑な理論問題であり、村民自治の実施において両方の衝突の形も様々である。この文では典型な事例における村民自治と公民権利との関係を検討した上で、村民の共同利益を基礎とする村民自治制度の展開が村民の基本権利を尊重しなければならないと主張する。公共権力の性格を有しない村民自治を言い訳として憲法及び法律に基づく村民の基本権利を制限できない。

一、村民自治の実行における人権問題

近年では村民自治の実行において、村民会議、村民代表会議及び村民委員会は重要な役割を発揮している。一般的に、村民自治が村民の共同利益及公共事務にかかわる領域に行われるが、法律上村民の公共利益と個人利益をうまく分けず、村民自治の形式及び内包が拡張されすぎ、直接に村民の個人権利に影響を及ぼす。権利侵害の主体には村民会議、村民代表会議及び村民委員会が含まれる。侵害された権利の種類には村民の基本生存権、個人身分権、個人財産権、請負経営権、プライバシー権、基本政治権利などが含まれる。

1、村民会議又は村民代表会議が村民の個人権利を侵害することについて

現実状況において、村民の集団投票で肯定される事項に無条件的に従わなければならないという認識が存在している。それは「村民自治」を何でもできる「政治の決断」と見なし、「多数人の意志」の権威性及び強制性を強調すぎ、多数の者が少数の者を抑圧する専制であるという考えもある。村民会議又は村民代表会議が不法で村民個人権利を侵害する状況の下で、村民が個人生命権や身分権を剥奪されたり財産権を制限されたりすることがある。

事例一

1999年1月27日の「中国青年報」には、1993年7月から1996年2月まで、湖北省武漢市武昌区沙湖村が相次いで易五宪などの村民53人を除名したと報道された。右村は1993年11月30日に村民代表大会の討論を通じて「労働雇員制度(試行)」を通過させ、街道党委員会、事務所に書面報告を出した。街道事務所は該制度の施行を認めた。右試行によれば、右村の農民が一年に三ヶ月以上出勤しないと、自動的に離職する(即ち除名する)と見なす。もし離職者であれば、村委員会がその者に1.5万元の生活費基数を一度だけ支払い、勤続年数補助金を一年間1000元になる。退職を取り扱った人が右村の村民でなくなり、その者及び彼らの家族が右村の全ての福利を享受できなくなる。この事例に、だれが村民に自治権利を与えるか、村民が法律身分の一種類であるか居住のため生まれる自然身分の一種類であるか、村民が村の土地と村集団財産にある法律権益を分配できるか、村民自治と憲法に規定される居住自由との関係は何か、というような極めて深刻な問題が現行の法律において明確にされず、憲法学上検討されないものの、村民自治の法的性質と法的意義にまで及ぶものなので、憲法上明らかに説明する必要がある。

事例二

1999年2月14日の「重慶商報」には、四川省巫山県田家郷紅花村の馮氏家族が1999年1月18日に「家族大会」を開くつもりで、その時千人以上が「祖先祭り」の活動を参加して、「家法族規」によって家族内の「親不孝な子」と言われた紅花村村委員会主任の馮道剛を死刑にすると掲載された。調査によれば、この活動の裏で画策者は紅花村村党支部書記の馮学登であった。馮学登は右村の村民を支配するために、宗族勢力を利用して村の規約を「家法族規」になさせ、村民の中で「馮氏家族」の成員がこの村の統治階級という噂を散らしていた。この事例が報道されたあと、すぐに巫山県の関係部門の注目を引いた。この事例からみれば、法律に従って村民自治を行わなければ、村民のための利益を図らなければ、別に下心がある人が村民自治を利用して封建的宗族勢力の活発を行うというおそれがある。そのため、我が国の法律において村民自治が法治による自治であることを明確にするのが非常に重要である。

2、村民委員会が村民の個人権利を侵害することについて

村民委員会が村民の個人権利を侵害する現象が多く、主に財産的権利、個人身分権などの民事権利に及ばれる。しばしば村の規約を根拠にして、村民会議の決定を理由にして、「適法で」村民個人権利を剥奪又は制限することを権利侵害の形式とする。

事例三

2010年11月1日に「京華時報」の報道によれば、二人の村民がいつも鎮政府、区政府に村の問題を告発したため、北京市門頭溝区竜泉鎮滑石道村村委員会が10月26日に、その二人及び彼らの家族が2010年11月30日までに滑石道村から戸籍を移転し、そうしないと永遠に村の全ての福利を享受できなくなるという通告を伝えた。10月28日に、滑石道村村支部書記はその通告の内容が村の規約に基づき村民代表会議によって決定されたと言った。この事例に、村民の戸籍と村民という身分が国家の法律、それもと村民の決定から生まれたものか争われた。現在では村民自治はその基本単位が自然村又は行政村であり、その本質上人の集合又は資本の集合から生まれた法人あるいは会社ではなく、歴史と社会から生まれたものである。村民と自然村又は行政村の間で天然的人身依存関係が存在している。特に農村集団の所有する土地が村民の基本生存権を保障する機能を有する。それで、村民の「村にある戸籍」を制限又は剥奪する権力を公共権力機構しか法律に基づき行えなく、村民自治組織がその権力を有することがわけではない。

事例四

法制週末の報道[1]によれば、河北省滄州地区任丘市新華路街道事務所南小徴村の11世帯の嫁女は南小徴村から引越しなかったので、村委員会に合法権益を侵害され(選挙権、住宅基地の分配権、土地請負権と土地徴用補償金が剥奪された)、あちこち上告に奔走していた同時に、土地徴用補償額が公開されなかったり、村民が土地売りを阻止したりする不思議な事例を関係機関に伝えた。

2008年に任丘市南小徴村が422ムーの土地を徴用された。今回の徴用のため南小徴村が数千万元の補償額を払われ、一部の村民が積極的に土地徴用を協力したので相当の補償金を得た。しかしながら、戸籍も南小徴村に置かれる11世帯の「嫁女」及び彼女らの子供たちは土地徴用補償金を得なかった。その11世帯の準村民(嫁女)は結婚の前から戸籍を南小徴村に置いて、その後もずっと移動したことがなかった。結婚した後、夫が妻の村に転居することもあった。一部の夫も戸籍を南小徴村に置いた(余所者としての夫も合法権益を剥奪された)。「嫁女」たちが南小徴村で生まれ育ち、ずっと村民の尽きるべきの義務を履行していた。

南小徴村の11世帯の「嫁女」から、2000年に南小徴村委員会に決定された「南小徴村金額分配方案」に基づき「嫁女」の土地徴用補償金が剥奪され、既婚した女性が結婚した一年後土地補償金を得られなくなると言われた。

2004年に土地二回請負が始まったが、その不平等の金額分配方案のため、嫁女の土地請負権も剥奪された。あの時から、土地補償金を剥奪された11世帯「準村民」は各政府機関へ申し立て始めた。

調査によると、土地補償金のほか、11世帯の「嫁女」が中国公民の最も基本の政治権利としての選挙権も南小徴村委員会に奪われた。「嫁女」は、結婚した後南小徴村から出て行かなかったものの、選挙権が剥奪され、村官吏の選挙又は他の村民の重大利益に及ぼすことを参加できなかったと言った。

これに対して、北方法制報法制週末客員法律顧問や北京弁護士としての楊春玉は、「選挙権は公民の基本の政治権利の一つである。満18歳の公民が選挙権と被選挙権を有して、裁判所が政治権利を剥奪するという判決を下す場合を除いて、だれでもその権利を侵害できない」と思う。もっと酷いのは、11世帯の「嫁女」が選挙権を非情に剥奪されたのみならず、彼女らの子供たちも選挙権を剥奪されたのである。「我が国は戸籍制度を実行する。でも、われわれが「嫁女」として右村から転居しなかったためだけ、彼らはわれわれの生存権を奪った。求められた費用を前と変らずに払っていたが、われわれに及ばす利益を与えなかった。だれが女性の権益を保護するのか!」「今までわれわれがずっと戸籍を南小徴村に置いて、どこに行っても南小徴村の村民だ」。権利を剥奪された南小徴村の「嫁女」がそう言った。この典型的な事例は今村民自治組織がその自治権範囲が広すぎ、もう公共事業と公共利益にサービスを提供するものから一面的に「多数の者」の利益を保護するものに変えたことを表明したのである。村民自治権はその実行における「待遇差別」が憲法に規定される平等権保護原則に違反して、法律によって厳しく制限されるべきである。

事例五

「銭江夕刊」の報道によると[2]、2006年5月にフフホト市賽罕区西把柵郷徐家沙梁村のお嫁28人がフフホト市中級人民法院に村民委員会を訴え、彼女らが右村で生まれた男性村民と同じ待遇を享受できるという主張を提起した。

農村のお嫁の土地請負や経済利益分配などの問題が社会に注目されており、5月12日に審理を傍聴する各界の人々がおおぜいいた。例えば、自治区人民代表大会、自治区婦人連合会などの相関部門の職員など。徐家沙梁村の村民委員会主任、村支部書記は出廷して応訴した。

以下は徐冬梅、聶翠蓮など28人の女性が提出した事実と理由である。彼女らが徐家砂梁村で生まれ、彼女らの夫が余所者であるが、戸籍を右村に置き、しかも右村で居住し、土地を長年わたり請け負っていた。1999年12月、村民委員会は土地二回請負において右村で生まれた女の人に土地を分配しないというように決定した。2000年11月、村民委員会は、右村が生まれた女の人が結婚した後相変わらず右村で居住するかどうかのを問わず、彼女らと彼女らの夫が村集団が村民のために建てた住宅ビルと商業ビルを分配する資格を持たないという決定を下した。そして、お嫁28人が土地二回請負権、「2つのビル」の分配権及び村民として法律によって受けるべきの他の重要な経済利益の分配権を剥奪された。2002年6月7日、上級の関連部門の関与を通じて、双方が「沙梁村民委員会とお嫁の間の土地二回請負と関連事情の合意」を成立して、その合意に基づきお嫁1人が1.7ムーの土地二回請負権を享有するが、住宅ビルと商業ビルを分配する資格がまだないとする。2年後、これらの土地がまた村民委員会に収用され、住宅ビルと商業ビルを建設する敷地になった。事例四のように、この事例においても村民自治組織の決定は法律に基づく村民の平等待遇を深刻に侵害した。

3、政策の原因で村民委員会が村民の権利を侵害することについて

現在では政策の原因で村民委員会が村民の権利を侵害する現象も頻繁に発生している。その主な表れは、都市高等学校に入学する農民が「強制的に農村戸籍から非農村戸籍に変わること」のせいで、戸籍権利、財産権利、政治権利などを違法で侵害されたということである。

事例六

1994年から、大学の卒業生と専門学校の卒業生は「仕事を分配する」という政策を享受できなくなった。それから2003年まで、国家の政策によって大学生と専門学校の学生が戸籍を学校まで移らなければならず、そうしなければ入学できなくなった。これは農村からの学生にとって、「強制的に農村戸籍から非農村戸籍に変わる」ようなことであると言える。しかし、2003年以降、国家政策の変化で、大学生と専門学校の学生が入学する時に戸籍の移転が自らの意志に従って決まり、農村からの大部分の学生は農村戸籍を非農村戸籍に変えなかった。このように、1994年までに卒業する人が「仕事を分配する」という政策を享受でき、2003年以降入学する人が農村戸籍を非農村戸籍に変えなくてもよかった一方で、1994年から2003年まで入学する人が政策のせいで得るべきの個人利益を剥奪された。例えば、2005年9月に、浙江省台州市路橋区政府は「大学の卒業生と専門学校の卒業生が本籍農村に戻って戸籍に登録することを実施する方法」を定めた。調査によると、2002年に、台州の臨海と温嶺は真っ先に大学の卒業生と専門学校の卒業生が「非農村戸籍から農村戸籍に変わる」ということを順調に進んでいた。そのほか、浙江省公安庁[2000]46号「戸籍問題の解決に関する通知」5条に基づき、都市で生活の基礎がなく、実際に農村で居住し、地元の郷鎮、行政村が戸籍の登録を同意し、しかも登録したあと連鎖影響を生じさせない場合に、本人の申請と管轄区域派出所の事実の確認を経て、県(市、区)の公安機関はその申請者が農村で戸籍に登録することを許可できるとする。それに、2002年2月8日に国家教育部、公安部、人事部、労働保障部が規定した「普通高等大学卒業生の就職制度改革の深化に関する意見」7条によって、大学卒業生が2年以上を経てまだ就職を決めていないと、学校と書類管理機構は卒業生の戸籍と書類を入学の前の戸籍の登録地に移すとする。概算統計によると、1994年から2003年まで卒業した浙江省台州市の大学生と専門学校の学生の中で、該市の人材交流センターや各郷鎮でしばらく戸籍を登録する卒業生が多かった。彼らが1970年代又は1980年代に生まれ、戸籍問題で結婚や子供の入学のみならず生存さえも問題になった。[3]この事例において政策の原因で農村からの大学生の法的権利がなくなったような状況の下で、戸籍制度が「都市と農村の相違」というような弊害を招くという問題、村民自治組織が政策を根拠して大学生としての村民の合法的権益を有効的に保護できないという問題がある。

二、村民自治に対して法治原則による制約を欠くことが人権問題が発生する制度根源である

どうして村民が村民自治を実行する過程において以上に言ったように村民の個人権利を侵害する現象が生じたのか、全体としてその制度上の原因は主に3つがある。1つ目は、中国における現行の法律制度からみれば、公共権力が公民の個人権利を制限又は剥奪することを防ぐ「適正手続」のような規定が少なく、それが国家機関や公権力を行使する社会組織を含む公共権力部門が公民の個人権利の存在価値を軽視させ、権利による権力制約のような法律意識を欠かせるということである。二つ目は、法律上一般的に村民自治の「民主」性や実現意義が定められるに過ぎないが、「私法組織」という村民自治組織の法的性質が明らかではなく、「民主」の実現に対する制限がなく、「多数の者による暴政」という極端な民主が生じやすいということである。三つ目は権利が侵害される村民を守る実効的権利救済制度がないので、たとえ村民自治組織が村民の個人権利を侵害する現象が非常に深刻であるとしても、覆い隠される或いは黙認されるかもしれないのである。上述の原因をまとめ、結局、法治による村民自治が確立されないのである。村民自治が村民の「民主」による簡単的な民主的決断であるというべきでなく、村民自治が法治原則から制限されれば、村民自治の事務範囲が全体村民の公共事務と公共利益に関連する事項に限られ、この範囲を超えたら、再び村民自治の形式で農村を「管理」することができない。

我が国の村民自治の法律根拠と言えば、1982年の憲法(現行憲法)における村民委員会の規定までさかのぼることができる。同憲法111条に基づき、農村で居民の居住地区によって設立される村民委員会は下部群衆自治組織である。村民委員会の主任、副主任と委員は住民の選挙によって決まる。村民委員会と下部政権の相互関係は法律で定める。居住地区における公共事務と公益事業を扱ったり、民間的紛争を解決したり、社会治安を守ったり、人民政府に大衆の意見や要求を説明してアドバイスしたりするために、村民委員会には人民仲裁、治安防衛、公共衛生などの委員会が設けられる。

憲法と法律における村民自治の性質についての規定から見れば、村民自治は法治から離れて独立の政治実体として行われる社会自治であるのではなく、法治による自治であるというべきである。例えば、憲法は村民委員会と下部政権の相互関係が法律で定めるものであると規定する。「中華人民共和国村民委員会組織法」6条に基づき、村民委員会は憲法、法律、法規と国家政策を宣伝し、村民が法的義務を履行することを励まし、公共財産を大切に守り、村民の合法的権利利益を保護し、村と村の間の団結や助け合いを促進し、及び様々なパターンで社会主義精神文明の建設を繰り広げるようしなければならない。それに、村民自治の重要な表現形式としての村民会議に制定される村民自治の規程と村の規約なども必ず憲法と法律に合わなければならない。「中華人民共和国村民委員会組織法」20条に基づいて、村民会議は村民自治の規程と村の規約を制定又は改正でき、記録に載せてもらうために郷、民族郷、鎮の人民政府に報告する。村民自治の規程、村の規約と村民会議又は村民代表に決定される事項は憲法、法律、法規と国家政策に抵触してはならなく、村民の人身権利、民主権利と合法的財産権利を侵犯してはならない。以上から見ると、村民自治は憲法と法律の範囲内で実行されるのである。そのため、自治権を行使する活動であろうと、自治権利を表現する村民自治の規程や村の規約であろう、すべてが国家の憲法、法律と法規に抵触することができない。

しかしながら、我が国の憲法と法律において村民委員会の職務が多く規定されるのに対し、村民自治の性質と村民自治の権利が少なく言及され、村民自治組織が憲法と法律に基づく村民の合法的権益を侵害した場合、と国家の全体的利益に反して自治の活動を行った場合どのように扱ったほうがいいのかなどの問題が法律上明確に規定されず、村民自治の実行において村民自治組織が国家の法律に反して村民の合法権益を侵害する現象が頻繁に起きる。例えば、村民委員会が勝手に村民を除名すること、少数の者が家族勢力を利用して村民の死刑を判決すること、宗族勢力で自己が村の支配階級と思って、村民が村民委員会を選挙する民主的権利を封建的秘密結社の性質を帯びるものに変化させることなどである。これらの問題は我が国の憲法と法律において村民自治の性質や村民自治の権利範囲の不明確に関わる。

要するに、我が国における村民自治が法律制度としてまだ完備ではない。制度上の不備ゆえ村民自治の規範化と制度化を実現することができない。我が国における独立の自治制度としての村民自治を制度化にする条件がまだそろっていない。現在では、村民を選挙権を十分に行使させることを通じて村民自治に合う組織を形成することが制度上確保されている。しかし、村民の選挙で形成される村民自治組織がどのように村民の代表として法律に従い村民自治権を行使するのか、村民自治組織としての村民会議と村民委員会の間の関係をどのように処理するのか、村民の代表としての村民委員会が法律に基づいて自治権利を行使する際、他人から不法な干渉を受けないことをどのように確保するのか、村民委員会の自治権を保障するためにどのように村民委員会と下部政権の間の関係や村民委員会と村支部の間の関係を処理するのかなどについて、さらに村民自治の実施経験をまとまった上で、法律による国家統治の基本要求と我が国の農村の現況に合う村民自治を制度化、法律化にして、我が国の自治制度において自身の特色を持つ重要な自治形式にしなければならない。

三、村民自治における人権保障を強める法律対策

人権の保障が法治なしには考えられない。村民自治の実行において村民が個人権利を侵犯された現象が生じる原因と言えば、我が国では公民の基本権利を保護する法律水準が低い一方で、村民が村民自治組織の決定で個人権利を剥奪又は制限された場合、実効的権利救済、特に司法救済に欠けている。村民自治の基本の法的性質によって、村民会議又は村民代表会議の決定であろうと村民委員会の決定であろうと、すべてが「国家権力」的法律行為であるといえなく、社団法人あるいは財団法人の行為であると考えられるべきである。もし村民自治組織の決定で村民が権利を侵犯されたら、民事的救済をもって十分に村民の基本権利を保護するべきである。そのとき、裁判所の司法救済が必要である。つまり、村民権利侵害にかかわる訴えであれば、裁判所は無条件に受理し、法律に基づいて村民の権利を保護しなければならない。

村民自治と村民個人権利の関係を正しく処理すれば、「村民委員会組織法」の施行において、村民の自治権利を保障するとともに、村民自治の限界を正確に把握し、村民自治の範囲の無限拡大を抑制し、憲法と法律に基づく村民個人の自治にかかわる事務を村民自治の「公共事務」の範囲に組み入れなければならない。村民自治権と、憲法と法律に基づく村民個人権利は同時に行うことが可能であって、両者の間で繋がりがあるものの区別もあって、法律によって両者の間の価値衝突と利益衝突を解決して、司法救済を通じて村民自治権利と村民個人権利の衝突を有効に解決できる権利紛争解決制度を作らなければならない。

1.村民自治権利の法律による保障

2010年に新たに改正された「村民委員会組織法」が村民自治権利の合法性を明確に認める。同法4条は「農村にある中国共産党下部組織は中国共産党の規程により職務を行い、リーダーとしての中心的機能を発揮し、村民委員会が職権を行使することに指導と支援を与えるとともに、憲法と法律の定めるところにより村民自治活動の実施と民主権利の行使のために支持と保障を提供する。」と規定する。39条に「地方の各級人民代表大会と地方の県級以上人民代表大会常務委員会は行政管轄区域内でこの法律の施行を保証し、村民自治権の行使を保障する。」と定められる。そうして、村民自治権利を保障することが一つの基本法律制度であり、村民自治権利の法的意義が国家機関の「公権力」を対応するところにある。村民自治の実行における種々の問題で村民自治制度を否定してはならない。村民自治は国家権力と公民権利との関係を正しく処理する過程において形成される公民権利の保護を強化する重要な制度であり、これも社会主義民主政治を実現するために従わなければならない原則である。

2.村民個人基本権利を尊重することを村民自治の合法性の前提とする

村民自治は法的性質上、主に国家機関が公民権利を侵害することを防ぐ権利実現制度であるので、村民自治権利が村民の憲法的権利と法的権利に属する。しかし、村民自治権利の代表する法律利益から見ると、村民自治権利が「集団人権」の性質を有する。「集団人権」が個人人権と同じ重要な法律地位を持っている。村民自治権利が一種の村民権利として、それと個人権利との間の価値調和を考慮するべきであって、そうしなければ、村民自治がかえって村民権利を制限する。村民自治をもって村民権利を保護するために、村民代表会議、村民会議、村民委員会が自治決定をする又は村の規約を定める際には、村民の個人合法的権利利益の保障を前提として、村の規約に村民の法的権利の尊重と保護を明確に書き込まなければならない。

3.村民自治組織から村民個人権利を守る行政救済と司法救済

言うまでもなく、我が国の村民自治が法律により行われるとともに、郷・鎮政府から監督を受けなければならない。そのため、郷・鎮政府は国家政権下部機関として、村民権利救済の専門構造を建てるべきである。その専門構造の中に、村民自治組織と村民の間の衝突の解決構造、専門機構の設立、村民自治の実行において村民個人権利の実現に支障を及ぼすおそれがあるものに相当の検査と監督を行うこと[4]などが含まれるべきである。それと同時に、裁判所が村の規約の適法性を審査する法的構造、と村民が村民自治組織に個人権利を侵害された訴えにかかわる専門受理制度を設立すべきである。現在の条件下で、民事審理手続に従い、権利侵害行為をした村民委員会を被告とし、権利を侵害された村民を原告とすることができる。裁判所は無条件にこれらの事例を受理すべきである。[5]条件がそろれば、県級裁判所で村民自治にかかわる訴えを受理する専門法廷を設立することができる。村民自治組織は法的性質上、会社法人あるいは社団法人と不完全に等しく、国家政権機関でもなく、「公法」の性質を有する「私的組織」であり、公共事務を扱うような職能を有する。司法において専門法廷がこのような事例を審理すれば、公法的理論と私法的理論を有機的に結び付くことができ、村民自治にかかわる紛争解決の中国的特色を持つ権利救済司法構造を形成することに役立つ。(李成玲译)

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[1]Cf.http://www.fanfucn.com/wwtx/2009-12-02/1353.html 。

[2]Cf. http://www.zjol.com.cn/05qianbao/system/2007/08/13/008696022.shtml。

[3]Cf.http://bbs.education.163.com/bbs/jiaoyu/189274861.html。

[4]2010年に新たに改正された「村民委員会組織法」27条1項は村民会議は村民自治の規程と村の規約を制定又は改正でき、記録に載せてもらうために郷、民族郷、鎮の人民政府に報告するとする。同条2項は村民自治の規程、村の規約と村民会議又は村民代表に決定される事項は憲法、法律、法規と国家政策に抵触してはならなく、村民の人身権利、民主権利と合法的財産権利を侵犯してはならないとする。同条3項は2項の規定に反した場合、郷、民族郷、鎮の人民政府は改正命令を下すとする。

[5]2010年に新たに改正された「村民委員会組織法」36条1項は村民が村民委員会又はその成員によって決定されることで合法的権益を侵害された場合、その決定を取り消し責任者に法定責任を負わせることを人民法院に請求することができるとする。2項は村民委員会が法律、法規によらず法定義務を履行した場合、郷、民族郷、鎮の人民政府は改正命令を下すとする。3項は郷、民族郷、鎮の人民政府が村民自治範囲に入れるべきの事項を干渉した場合、上級政府は改正命令を下すとする。