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中国における外商投資企業の清算手続について(1)
ーー夜逃げできるのか

1.金融危機の影響

ここ最近、米国発金融危機等のあおりを受けて、中国国内の多くの外商投資企業が経営不振から操業中止や生産縮小に追い込まれています。今回の金融危機がもたらした世界的影響は、一部では少なくともあと2、3年は続くであろうとも言われています。とりわけ輸出型の製造企業にとって、いかにこの難局を乗りきるかということが目下の大きな課題といえるでしょう。

2.韓国系企業の一斉夜逃げ事件

経営が行き詰まった際、そのほとんどの場合外国側の出資者がきちんと法に従って外商投資企業を清算したうえで中国から撤退する、というような手順を踏むわけですが、やはり中には何の法的手続も行わずに違法に撤退する(いわゆる夜逃げ)企業も現実的に存在します。昨年、中国山東省で100社以上の韓国系企業が一斉に夜逃げするという事件が発生しました。韓国系企業の出資者がひそかに韓国人出向者を韓国国内に引き上げ、現地の中国人従業員と工場設備を置き去りにしたまま、債務を処理を行わずに中国国内から蒸発してしまったのです。この衝撃的な事件は、中国のみならず韓国においても重大な問題として取り上げられました。

3.「夜逃げ」は逆効果である

夜逃げの動機として、中国における外商投資企業の清算手続が複雑で物理的に膨大な時間がかかってしまう背景が考えられますが、ただ単純に債務を逃れたいという企業の身勝手な自己都合も否めないでしょう。しかし、果たして夜逃げにより本当に債務を逃れることができるのでしょうか?この点について筆者は否定的に捉えています。つまり、むしろ夜逃げにより、債務がかえって増加し、外国出資者にとって予想外の損失を強いられるリスクが高いと考えられるからです。ここで注意喚起の意味も込めて、夜逃げによる外国企業の抱えるリスクの可能性を提示してみたいと思います。

4.出資者の清算義務の有無

有限責任会社の最大の特徴は、出資者の有限責任です。すなわち出資者がその引き受けた出資金額を限度に会社に対し出資義務を負い、その引き受けた出資金額を会社に全額払い込めば会社に対する義務はそれですべて履行され、たとえ会社が債務超過であっても出資者は会社の債権者に対して何の責任も負いません。このような出資者の出資義務は、従来から会社に対する出資者の唯一の義務であると考えらえています。しかし最近になって、会社を清算すべきなのに清算しない場合、会社の実質上の支配者である出資者が会社を清算する義務を負うべきであると主張する論者が増えてきています。

5.清算義務を認めた司法解釈

中国最高人民法院(日本の最高裁判所に相当)が2008年5月5日に「『中華人民共和国会社法』の適用の若干問題に関する最高人民法院の規定(二)」(以下、司法解釈という)を公布し、出資者の清算義務および損害賠償責任を明確に定めました。これにより、有限責任会社の出資者が法定の期間内に清算委員会を設置せず清算を開始しなかったことで、会社の資産の値下げ、流出、損または滅失をもたらしたとき、債権者は当該損失の範囲内において出資者に会社の債務に対しての賠償責任の負担を主張することができます。また、会社の主要財産、帳簿、重要書類等の紛失により会社を清算できない場合、債権者が出資者に対して会社の債務の連帯賠償責任を追及することができます。

具体例で説明しましょう。外国企業A社が中国でB社を設立しました。しかしB社は経営不振に陥り、A社はB社を清算せずに夜逃げをしました。このとき、B社は30万元の資産を有しており、別のある企業C社に対して50万元の債務を負っています。B社を管理する人間がいなくなったため、その後B社の資産は急激に下落し、もともと30万元あった資産は3ヵ月後には5万元になってしまいました。

この場合、C社はA社に対して、B社の資産の下落した差異25万元(30万--5万)の範囲内において賠償を求めることができます。これだけではありません。C社がB社の清算を求め、裁判所がB社の清算を執行する際に、B社の帳簿等が見当たらないために清算できないと判断された場合、A社がB社の債務に対して連帯賠償責任を負うことになり、B社に代わってC社に50万元を賠償しなければなりません。

6.結論

出資者が会社を清算しない場合の責任について、これまで学説および判例の見解には様々な解釈がありましたが、司法解釈の公布により、出資者の清算義務および損害賠償責任が明確になりました。これにより、夜逃げは債務を逃れるどころか、出資者の外国企業にとって逆にさらに多大な損害をもたらす結果となります。したがって、清算手続の面倒さを怖がらず、清算手続は出資者の有限責任(出資額を限度に)を守る手段と考え、出資者の無限責任(会社の債権者から出資額以上に責任を追及されること)の追求から避けるために、法に従い清算する必要があると言えるでしょう。

次回は、外商投資企業の清算手続をご説明したいと思います。

(作者:韓晏元 潤明法律事務所パートナー弁護士 神戸大学博士(法学))

「人民網日本語版」2008年12月4日)